どうしてこうなったんだろう。
人生でこう思うことは良くあることだ。例えば、親しい友人と喧嘩してしまった時、会社で失敗してしまった時、他にもたくさんあるだろうが、しかし、なぜだろう?必ずこう考えるわけだが、私にはその理由が分からない。
ノルン様のために、資金を集め、障害となる人物を全て消してきたのになぜだ。なぜ私は救われないのだ。どうして私は町のゴミの中に居るのだ。私は見捨てられたのか。
いや、違う。きっとそうだ。
男は拳を握り、壁に思い切り叩きつける。まるで、自分の存在を確かめるように、認めさせるように、しかし、それが自分の立っている空間を壊すことも分からずに。
すべては、墨奈のせいである。あいつがあんな薬を作らなければ、こうはならなかった。部下も失わずにすんだ。そう、すべて奴のせいだ。
覚悟を決めて、立ち上がると、さっきひろったバッグを下げ歩き出す。ただ一人罰を受けていな者に、制裁を与えるために。装備は、M92が残り4発に、さっき拾ったバッグには手榴弾2個、スタングレネード1個。後ろから忍び寄れば銃で一発だ。
強すぎる忠誠心を持った男は崩れて、変貌し、島の存在に相応しく生まれ変わり、暗い暗い本当の闇へと消えていった。
いや、落ちていった。
北区の中心からやや外れた地区にその家はあった。
見た目は平均的な2階建ての家で、普通に光熱費など、家賃を考えると、一人暮らしには広すぎるほどだ。
しかし、この島は違う。家を建てるには、金はかかるが、光熱費などはほかの国に勝手に押し付けている。正確には、近くの国からパイプを勝手に伸ばし、ガスなどを頂戴しているのである。さらに、島全体が大型の自然の発電機にしたようなものだから、電気は売るほどあまっているのだ。
さらに、家賃を払うのは一部の金持ちが、自分の見栄を張るためであるからして、ほとんどの家は立っていれば、ほぼ無料で無断で住むことができるし、持ち主が死んだ家も同様だ。
そこを求めて、まともな家を失った人が集まる場合も良くある。特に多いのは日本人の若者であるが。
そんな感じで、この島で家を持っていない人はほとんどない。あくまでほとんどである。常に変わっている人口を常に管理する事は流石に出来ない。
そして、墨奈の家をたずねる。
「すいませーん。詩焉ですけどー。」
インターフォン越しに相手を呼ぶ。こんな所まで給料取りに来るなんて、さすがに厚かましいだろうか。
いや、そんなことは言ってられない。今月は本当に危ないんだ。
「あぁそうだ、そうだ。君に渡しそびれていたよ。」
ドタドタという音がして、複数の玄関のガギが次々に開けられる音がしてきた。
そして、ドアを開けたのは、頭が少しさびしくなった、中年の元雇い主で、今日の救出対象だ。
「すまないが、銀行まで一緒に来てくれないか?今あいにく手持ちが無くてね。」
「あぁ分かりました。」
もちろんこの島にATMなんてものは無い。あったらすぐに住民のための寄付金となるだろう。
そのため、お近くの銀行へ住民は訪れる。
銀行が歩いてせいぜい10分程度の所にあるので、徒歩で向かう。街灯などはしっかりとあるので間隔間隔はくらいが、夜でも十分明るい道を歩くことが出来る。
歩くこと数分。
微妙な雰囲気の変化をまず始めに怜火が感じ取った。
「詩焉さん。」
「あぁ」
怜火に言われて、ようやく気づく。
「そこの角を曲がって、墨奈さんを連れて行ってください。」
無謀なことを言われ、正直止めようとしていたが、彼女の瞳を見てしまったらそんなことは出来なくなってしまった。あの目ではない。本当の決心の目だ。
「墨奈さん。曲がったら一気に走りますよ。」
相手の返事も確認せず、曲がった瞬間手を引いて思いっきり走る。
銀行に送れば、安全は十分に確保できる。銀行がある場所は、島の安全区域に指定されているから、下手に騒ぎは起せないはず。
曲がった敵を撃つ為に、怜火は角から3歩ほど離れた所で待ち構えた。
一歩一歩近づいてくるのが、よく分かる。
呼吸を整える。深く。深く。
不意を付いて一気に仕留める。
自分の中でリズムを決める。そのリズムにしたがって、相手に拳を叩き込む。
それで、終わるはずだった。
放たれた拳は空を切り、代わりに銃が視界に飛び込んできた。
とっさに、銃口を見てある程度の場所を予想して身をねじる。
続けさまに2発。
二人の姿が街灯に照らされる。
「ウィン隊長。」
「怜火か。お前になら本気でいける。そこを退けとは言わん。ここに散れ。」
銃をしまい、ナイフを構えさしてくる。
詩焉と戦った時とは、まるで動きが違った。切れのあるナイフ捌き、軽やかなフットワーク。全てが別人の動きだ。しかし、その攻撃は怜火には当らない。ナイフは腕をはじかれ、空を切る。そして、そこに拳を叩き込むが、その拳をウィンはしっかりと受ける。
お互い一歩も譲らない激しい勝負を続ける。
しかし、装備と言う点で、怜火は圧倒的に不利だった。
一歩下がり手榴弾を投げる。住宅地であるとか無いとか、今の彼には関係ない。
しかし、全てを捨ててない怜火には、今後がある。こんな所で手榴弾を使い被害を出すわけにはいかない。拾って、そこらへんに投げるわけにも行かない。一瞬の迷いのせいで、動くことが出来ずその場に固まってしまった。死を覚悟したが、爆発は起こらず、代わりにスタングレネードが投げ込まれていた。
気付くのに一瞬遅かったため、目をつぶっても薄い瞼では強烈な光を塞ぎきれなかった。
目は眩しくて開けられない。耳はキーンっとして何も聞こえない。
気配だけでナイフをかわす。いつもどおりではなく、さっきまでの地形を思い出し、後ろへ思いっきり跳ぶ。
「聞こえないだろうが、お前の言葉を聞く義理も、もう無い。」
静かにナイフを構えなおし、殺りに行く。
経験だろうか、本能だろうか、一瞬で距離を縮めるような踏み込みからのナイフを寸前でかわす。
「あーったく、何にも聞こえないし、見えないか。こりゃーまいった。」
怜火のまとっている雰囲気が一瞬で変わる。
「死ぬ訳にはいかないんだ。お前が死ね。」
見えないはずなのに、ウィンの手首を払い、ナイフを奪う。
「お前はやかましいな。動きがすぐ分かるんだよ。」
狩る立場と狩られる立場が変わった。怜火からのナイフをウィンは避けきれず、だんだんと切り傷が増えていく。
「もう、おしまいにしようか。」
懐に飛び込んだ怜火から、強烈な一撃が加えられた。
人生でこう思うことは良くあることだ。例えば、親しい友人と喧嘩してしまった時、会社で失敗してしまった時、他にもたくさんあるだろうが、しかし、なぜだろう?必ずこう考えるわけだが、私にはその理由が分からない。
ノルン様のために、資金を集め、障害となる人物を全て消してきたのになぜだ。なぜ私は救われないのだ。どうして私は町のゴミの中に居るのだ。私は見捨てられたのか。
いや、違う。きっとそうだ。
男は拳を握り、壁に思い切り叩きつける。まるで、自分の存在を確かめるように、認めさせるように、しかし、それが自分の立っている空間を壊すことも分からずに。
すべては、墨奈のせいである。あいつがあんな薬を作らなければ、こうはならなかった。部下も失わずにすんだ。そう、すべて奴のせいだ。
覚悟を決めて、立ち上がると、さっきひろったバッグを下げ歩き出す。ただ一人罰を受けていな者に、制裁を与えるために。装備は、M92が残り4発に、さっき拾ったバッグには手榴弾2個、スタングレネード1個。後ろから忍び寄れば銃で一発だ。
強すぎる忠誠心を持った男は崩れて、変貌し、島の存在に相応しく生まれ変わり、暗い暗い本当の闇へと消えていった。
いや、落ちていった。
北区の中心からやや外れた地区にその家はあった。
見た目は平均的な2階建ての家で、普通に光熱費など、家賃を考えると、一人暮らしには広すぎるほどだ。
しかし、この島は違う。家を建てるには、金はかかるが、光熱費などはほかの国に勝手に押し付けている。正確には、近くの国からパイプを勝手に伸ばし、ガスなどを頂戴しているのである。さらに、島全体が大型の自然の発電機にしたようなものだから、電気は売るほどあまっているのだ。
さらに、家賃を払うのは一部の金持ちが、自分の見栄を張るためであるからして、ほとんどの家は立っていれば、ほぼ無料で無断で住むことができるし、持ち主が死んだ家も同様だ。
そこを求めて、まともな家を失った人が集まる場合も良くある。特に多いのは日本人の若者であるが。
そんな感じで、この島で家を持っていない人はほとんどない。あくまでほとんどである。常に変わっている人口を常に管理する事は流石に出来ない。
そして、墨奈の家をたずねる。
「すいませーん。詩焉ですけどー。」
インターフォン越しに相手を呼ぶ。こんな所まで給料取りに来るなんて、さすがに厚かましいだろうか。
いや、そんなことは言ってられない。今月は本当に危ないんだ。
「あぁそうだ、そうだ。君に渡しそびれていたよ。」
ドタドタという音がして、複数の玄関のガギが次々に開けられる音がしてきた。
そして、ドアを開けたのは、頭が少しさびしくなった、中年の元雇い主で、今日の救出対象だ。
「すまないが、銀行まで一緒に来てくれないか?今あいにく手持ちが無くてね。」
「あぁ分かりました。」
もちろんこの島にATMなんてものは無い。あったらすぐに住民のための寄付金となるだろう。
そのため、お近くの銀行へ住民は訪れる。
銀行が歩いてせいぜい10分程度の所にあるので、徒歩で向かう。街灯などはしっかりとあるので間隔間隔はくらいが、夜でも十分明るい道を歩くことが出来る。
歩くこと数分。
微妙な雰囲気の変化をまず始めに怜火が感じ取った。
「詩焉さん。」
「あぁ」
怜火に言われて、ようやく気づく。
「そこの角を曲がって、墨奈さんを連れて行ってください。」
無謀なことを言われ、正直止めようとしていたが、彼女の瞳を見てしまったらそんなことは出来なくなってしまった。あの目ではない。本当の決心の目だ。
「墨奈さん。曲がったら一気に走りますよ。」
相手の返事も確認せず、曲がった瞬間手を引いて思いっきり走る。
銀行に送れば、安全は十分に確保できる。銀行がある場所は、島の安全区域に指定されているから、下手に騒ぎは起せないはず。
曲がった敵を撃つ為に、怜火は角から3歩ほど離れた所で待ち構えた。
一歩一歩近づいてくるのが、よく分かる。
呼吸を整える。深く。深く。
不意を付いて一気に仕留める。
自分の中でリズムを決める。そのリズムにしたがって、相手に拳を叩き込む。
それで、終わるはずだった。
放たれた拳は空を切り、代わりに銃が視界に飛び込んできた。
とっさに、銃口を見てある程度の場所を予想して身をねじる。
続けさまに2発。
二人の姿が街灯に照らされる。
「ウィン隊長。」
「怜火か。お前になら本気でいける。そこを退けとは言わん。ここに散れ。」
銃をしまい、ナイフを構えさしてくる。
詩焉と戦った時とは、まるで動きが違った。切れのあるナイフ捌き、軽やかなフットワーク。全てが別人の動きだ。しかし、その攻撃は怜火には当らない。ナイフは腕をはじかれ、空を切る。そして、そこに拳を叩き込むが、その拳をウィンはしっかりと受ける。
お互い一歩も譲らない激しい勝負を続ける。
しかし、装備と言う点で、怜火は圧倒的に不利だった。
一歩下がり手榴弾を投げる。住宅地であるとか無いとか、今の彼には関係ない。
しかし、全てを捨ててない怜火には、今後がある。こんな所で手榴弾を使い被害を出すわけにはいかない。拾って、そこらへんに投げるわけにも行かない。一瞬の迷いのせいで、動くことが出来ずその場に固まってしまった。死を覚悟したが、爆発は起こらず、代わりにスタングレネードが投げ込まれていた。
気付くのに一瞬遅かったため、目をつぶっても薄い瞼では強烈な光を塞ぎきれなかった。
目は眩しくて開けられない。耳はキーンっとして何も聞こえない。
気配だけでナイフをかわす。いつもどおりではなく、さっきまでの地形を思い出し、後ろへ思いっきり跳ぶ。
「聞こえないだろうが、お前の言葉を聞く義理も、もう無い。」
静かにナイフを構えなおし、殺りに行く。
経験だろうか、本能だろうか、一瞬で距離を縮めるような踏み込みからのナイフを寸前でかわす。
「あーったく、何にも聞こえないし、見えないか。こりゃーまいった。」
怜火のまとっている雰囲気が一瞬で変わる。
「死ぬ訳にはいかないんだ。お前が死ね。」
見えないはずなのに、ウィンの手首を払い、ナイフを奪う。
「お前はやかましいな。動きがすぐ分かるんだよ。」
狩る立場と狩られる立場が変わった。怜火からのナイフをウィンは避けきれず、だんだんと切り傷が増えていく。
「もう、おしまいにしようか。」
懐に飛び込んだ怜火から、強烈な一撃が加えられた。



